解決事例
相続放棄
20年余り音信不通であった叔父の固定資産税を支払うよう地方自治体から通知があり、 弁護士が相続放棄の手続きを遂行した事例
●背景
ある地方自治体から、Aさんに叔父であるBさんの不動産の固定資産税・都市計画税を支払うよう通知が送られてきました。Bさんは10年以上前に死亡し、その後固定資産税・都市計画税はBさんの妻のCさんが支払っていましたが、Cさんが死亡したため地方自治体が調査し、法定相続人の一人であると判明したAさんに納税の通知を送付したものでした。
Bさん死亡後、Bさんの不動産は相続による所有権移転の登記手続きがなされていなかったため、Cさんが亡くなったあと、Aさんが法定相続人の一人として納税を求められたのです。
Aさんは、遠隔地にあるBさんの不動産を相続したり、固定資産税・都市計画税を納付したりする意思はなく、どのように対応したらよいかを相談するため、ホームページで知った当事務所を訪問されました。
●弁護士の関わり
弁護士はAさんに、管轄の家庭裁判所に相続放棄の申立を行うことを勧め、Aさんは手続きを弁護士に委任されました。
弁護士は委任を受け、戸籍謄本や相続関係説明図などの相続放棄に必要な書類を整え、管轄の家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出しました。
弁護士は申述書で、「AさんはBさんの死亡後はBさんの親族との交流もなく、Bさん不動産の固定資産税・都市計画税は妻のCさんが支払っていたので自分が法定相続人であるとの認識はなかったこと。」、「地方自治体から納税をするように通知する文書受け取って、初めて自分がAさんの相続人の立場にあることを知ったこと。」などを説明し、AさんはBさんの財産を相続する意思はないと主張しました。
申立後1週間あまりで申立は受理されました。Aさんは家庭裁判所から相続放棄申述受理証明書を発行してもらい、これを地方自治体に送付しました。これにより、AさんはBさんの不動産の固定資産税・都市計画税を納付する義務を免れることができました。
●弁護士の所感
不動産の所有者がなくなった時、実質的な相続はなされても、相続による所有権移転登記を怠ることがあります。このような場合、法的にその不動産の相続が完了していないので、思いがけない時に法定相続人として自分が関わることもあり得ます。
自分が予期せず法定相続人になったけれども、その遺産を相続する意思がない場合は速やかに手続きをする必要があります。相続のことを知ってから3か月以内に相続放棄の手続きをしないと自動的に相続人になります。
特に、借金や借財などの負の遺産の方が大きい場合は、速やかに相続放棄の手続きをしないと自分がその負債を返済する義務を負ってしまいます。
又、相続するかどうかを遺産の額で決めようとする場合は、きちんとした財産調査をして、相続にメリットがあるかどうかの判断が必要です。
遺産相続において問題が発生した場合は、ためらわずに弁護士に相談されることをお薦めします。深く考えないで対応を誤ると、後で悔やむことになりかねません。弁護士は多くの経験から、依頼者にとって最善の方法を見出し、アドバイスすることができます。又、代理人として手続きの代行をして、相続人を複雑な事務作業から解放することが可能です。