コラム
再転相続とは?対応の流れや相続税・相続放棄の注意点を弁護士が解説!
再転相続の対応が複雑で「どこから手続きをはじめればいいのかわからない」「相続放棄の期限が不安」「協議の進め方を間違えたくない」と感じる方は多いです。
本記事では、再転相続の仕組みや熟慮期間の考え方、相続放棄の判断基準などを弁護士がわかりやすく解説します。
相続人が続けて亡くなった場合でも、必要な判断を整理し、落ち着いて対応できるようになります。
再転相続とは?対応の流れや相続税・相続放棄の注意点を弁護士が解説!
再転相続の対応が複雑に感じられ、どこから手続きをはじめればよいか迷う人は多くいます。
相続放棄の期限や協議の進め方を誤ると、意図しないリスクを抱えるかもしれません。
この記事では、再転相続の仕組みから熟慮期間の考え方、遺産分割協議の注意点まで流れに沿って弁護士が整理して解説します。
再転相続についての全体像を理解でき、相続人が続けて亡くなる場面でも落ち着いた判断をしやすくなります。
再転相続とは?
再転相続とは、相続人が相続を受ける前に亡くなり、承継すべき権利が次の世代へ移る相続の形のことです。
本来の相続人が相続放棄や単純承認などの意思表示が未了の状態で、次の相続人には判断が二重に連なります。
たとえば、父が祖父の相続を検討中に亡くなると、父が選ぶはずだった相続の可否を子が判断する流れになります。
相続放棄の期限や遺産分割協議の扱いが複雑になりやすく、手続きの流れを正しくおさえることが大切です。
再転相続について理解を深めるためには、「熟慮期間」やその他の相続のケースとの違いについて理解する必要があります。
熟慮期間とは?
熟慮期間は、相続人が相続を承認するか放棄するかを決めるための猶予期間を指し、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時点から3か月」と定められています。
判断の期限が法律上決まっており、遺産の内容を調べる期間でもあります。
預金や不動産の名義、借金の有無を確認しながら相続放棄するかどうかの選択を行う場面が典型です。
熟慮期間内に家庭裁判所へ申立てれば延長もできます。
再転相続は、この熟慮期間中に相続人が亡くなるケースです。
数次相続との違い
数次相続は一次相続を承認した人が遺産分割の途中で亡くなる場面を指し、再転相続と発生時期が異なります。
熟慮期間が終わった後に起こるため、二次相続の相続人は一次相続を放棄できません。
承認済みの手続きを引き継ぐ構造だと理解しやすいでしょう。
祖父の相続を父が受け入れた後、父が死亡した例などです。
父の遺産分割と祖父の遺産分割が続けて必要になり、書類作成が増えます。
代襲相続との違い
代襲相続は本来相続人になる人が先に亡くなった際、その子が代わって権利を承継する制度です。
再転相続は熟慮期間中の死亡によって権利が次に移るため、死亡の順番が反対です。
たとえば、父が祖父より先に死亡した場合は代襲相続になります。
祖父→父の順に亡くなった場合は再転相続になり、孫が一次相続と二次相続をまとめて判断する流れになります。
相次相続との違い
相次相続は一次相続の申告後10年以内に次の相続が起きるケースを指し、税務の負担が重なります。
再転相続は熟慮期間中に死亡が続くため、判断すべき内容が短期間に集中します。
たとえば父が祖父の申告を終えた後に亡くなれば相次相続です。
一方で、祖父の相続の可否を検討中に父が亡くなった場合は再転相続になります。
同時死亡との違い
同時死亡は、事故などで複数人が同じ時刻に亡くなったと推定され、誰が先に死亡したか判断できないケースです。
民法では死亡順が決められない場合、互いに相続し合わない扱いとなり、配偶者や子へ直接権利が移ります。
たとえば、祖父と父が同じ事故で亡くなれば同時死亡と扱われますが、祖父の相続を検討している段階で父が病死した場合は再転相続です。
再転相続における認められる対応・認められない対応
再転相続では、相続人が一次相続と二次相続について判断が求められます。
どのような対応が認められるのかあるいは認められないかについて、解説します。
認められる対応
- 一次相続と二次相続をどちらも承認
- 一次相続と二次相続をどちらも放棄
- 一次相続を放棄し二次相続のみ承認
再転相続では、相続人が連続して亡くなった場面で二つの判断を行う必要があります。
一次相続と二次相続を同じ方向で処理する対応は問題なく行えます。
祖父と父の双方を相続する形や、双方を放棄する形が典型です。
また父のみ相続し、祖父の不動産や債務を引き継がない対応も認められます。
たとえば祖父に借金が多い場合、父の遺産のみ受け取りたい希望をもつ再転相続人は珍しくありません。
認められない対応
- 二次相続を放棄し一次相続のみ承認
再転相続では、二次相続を放棄した時点で一次相続人としての地位も消えます。
地位を失うと祖父の遺産を承認する権限も残らないため、一次相続のみ承認する処理は成立しません。
父に負債があっても父を放棄し、祖父の財産だけを受け取る形は法律上できない仕組みになっています。
再転相続における相続放棄
再転相続においては熟慮期間内に相続を承認するか相続放棄するかの判断が迫られます。
その期間および期間を過ぎてしまったケースについて解説します。
相続放棄するかどうかの熟慮期間
再転相続においても、熟慮期間は原則3か月です。
「自分が再転相続人になったことを知った時点」から起算されます。
期限の把握が曖昧なまま手続きをはじめると、意図しないまま負債を抱えることもあります。
たとえば、一次相続人が財産内容を確認する前に亡くなり、その後で自分が相続人になったと知るケースです。
この状況では、一次相続の財産がどの程度か不明なまま判断を迫られる可能性があります。相続放棄の可否は期間内に家庭裁判所へ申述することで確定するので、通知日を基準に速やかな対応が必要です。
判断が難しいケースでは、弁護士などの専門家に相談するなどし、期限までの解決を後押ししてもらいましょう。
熟慮期間が経過した場合は?
熟慮期間を過ぎてしまった場合、原則として相続放棄はできず、法律上は相続を承認したと扱われます。
上述したように、再転相続では、一次相続の内容を知らないまま期限が過ぎると、気付かないうちに債務まで引き継ぐリスクがあります。
期限を過ぎてしまったと思っても、いつ知ったかが判断材料になるため、記録を整理しながら専門家へ事情を伝えるとよいでしょう。
その他再転相続の注意点
再転相続は通常の相続よりも複雑なため、相続放棄以外についてもとくに次の点については注意が必要です。
- 特別受益
- 相続税
- 登記
それぞれについて解説します。
特別受益
再転相続では、元の相続人が受けていた特別受益は、そのまま再転相続人にも影響します。
相続人が遺産分割前に死亡しても、受けていた生前贈与は「相続分の前渡し」扱いです。
たとえば、祖父が死亡し、相続人は父と叔母の2人とします。
父は生前に祖父から住宅資金500万円の特別受益を受けていました。
その後、父が遺産分割前に亡くなると、父の相続分は子どもである孫たちに再転相続されます。
しかしこのとき、父が受けていた特別受益はそのまま孫の取り分計算に反映され、叔母に比べて受取額が少なくなります。
相続税
再転相続では相続が2回発生するため、本来は相続税も二重に課税されます。
しかし、この重複を避けるために適用できるのが「相次相続控除」です。
たとえば、祖父の遺産から父の相続税が50万円程度発生するケースでは、その50万円が孫の相続税から控除され、結果として孫の負担は70〜80%程度減ることも珍しくありません。
遺産規模によって控除額は変動しますが、一般的には「祖父→父の相続税額がそのまま孫の相続税の減額分になる」と理解しておくとよいでしょう。
登記
再転相続が起きると、不動産の名義変更をどの段階で行うかも重要です。
一次相続と二次相続のどちらにも同じ相続人が入っている場合は、名義を一度の登記でまとめて移せる場面があります。
たとえば父の死亡後に母が続けて亡くなり、子が唯一の承継者になる例では、父名義の不動産を子へ直接移す手続きが可能です。
一方で相続人の構成が変わるケースでは、手続きを二段階に分けて進める必要があります。
登記の流れを簡略化できるのは、一次相続で承継者が一人に限られる場面です。
このような場合には中間の登記を省き、最終的な相続人へ名義を移す方法が認められています。
再転相続の手続き対応
再転相続の手続きについては、とくに遺産分割協議についての対応が通常の相続と異なります。
どういった点に注意すべきか解説していきます。
遺産分割協議の進め方
再転相続が起きた場合、一次相続と二次相続それぞれについて遺産分割協議を行う必要があります。
一次相続では、本来の法定相続人に加え、二次相続の発生により相続権を引き継いだ再転相続人も協議に参加します。
一方、二次相続の協議には二次相続の法定相続人全員が参加する形です。
協議は一次と二次を分けて行うのが実務では一般的で、遺産分割協議書も二部作成することが多いです。
たとえば、祖父→父の順に死亡したケースでは、祖父の協議には子が再転相続人として参加し、父の協議には子が通常の相続人として参加します。
再転相続特有の確認事項
再転相続では、一次相続の法定相続人の一人がすでに亡くなっているため、協議書に署名できません。
そのため一次相続の遺産分割協議書には、亡くなった相続人の欄に「相続人兼被相続人」と明記し、生存する法定相続人と再転相続人が署名・押印します。
また、一次相続と二次相続の法定相続人が同じであれば、1回の協議と1枚の協議書にまとめることも可能ですが、参加者が異なる場合は必ずそれぞれ別に作成する必要があります。
一次と二次で参加者が変わることを見落とすと協議が無効になるおそれがあるため、戸籍や相続関係図を基に相続人を丁寧に確定することが大切です。
再転相続について弁護士に依頼するメリット
再転相続は判断すべき内容が二重になるため、戸籍の読み違いや期限管理のミスが起きやすい手続きです。
弁護士に相談することで、見落としや誤解を防ぎながら確実に手続きを進められます。
弁護士に依頼するメリットは下記の通りです。
- 再転相続の相続関係を正確に整理できる
- 相続放棄の可否についてアドバイスを受けられる
- 相続登記や書類作成の手間を大幅に削減できる
それぞれについて解説します。
再転相続の相続関係を正確に整理できる
弁護士は戸籍の取得から関係図の作成までを行い、抜けや重複を避けて相続関係の整理が可能です。
たとえば、一次相続で本来相続人だった人が二次相続の被相続人となるケースでは、二つの立場が混在します。
専門家が確認することで、誰がどの権利を承継しているかが明確になり、遺産分割協議や相続放棄の判断に進みやすくなります。
相続放棄の可否についてアドバイスを受けられる
弁護士は取得した戸籍や死亡日を基に熟慮期間を計算でき、何を先に判断すべきかを整理してくれます。
たとえば、一次相続の財産に多額の負債が含まれていた場合、放棄の手続きを急ぐ必要があります。
こういった専門家の助言があれば、書類の提出順やタイミングを整えやすいです。
相続登記や書類作成の手間を大幅に削減できる
再転相続が起きると一次相続と二次相続の双方で登記が求められる可能性もあり、書類数が増えやすいです。
登記に必要な添付書類の種類も多いうえ、誤記があると受付されない例もあります。
弁護士に依頼することで、申請書の作成から添付書類の整備までを任せられ、作業の負担をおさえることが可能です。
まとめ
この記事では、再転相続の仕組みや熟慮期間の考え方、相続放棄の判断基準、再転相続の注意点等について整理してきました。
本記事のおさえるべきポイントは次のとおりです。
- 熟慮期間は原則3か月で延長申請が可能
- 一次相続と二次相続の判断は独立して求められる
- 特別受益・相続税・登記は影響範囲を二重に確認する
- 協議は一次と二次を分けて進めるのが基本
再転相続は、通常の相続より判断すべき事項が増えるため、手続きを一人で抱えると不安が重なりやすいです。
まずは現状を整理し、相続人の範囲と期限を明確にしましょう。
混乱しやすい再転相続だからこそ、専門家に相談しながら冷静な判断で進めることが大切です。
弁護士への相談は初回無料の法律事務所もあるので、早めに専門家を活用すると安心して進められます。




