解決事例
相続
自筆証書遺言の遺留分について異議があり、弁護士が遺言執行者に選任され遺言書を執行した事例
●背景
Aさんの父親が死亡し自筆証書遺言が残されていました。遺言書には妻であるBさんと長男のAさんに1/2ずつ相続させると書いてあり、その他のCさんとDさんには、要望があればそれぞれ財産の一部を相続させると書いてありました。
Aさんは裁判所に自筆遺言証書の検認を申し立て、遺言書検認証明書が発行されました。Aさんは遺言書を執行しようとして、CさんとDさんに父親の銀行口座を解約するために必要な書類作成に協力を求めましたが拒否されました。
CさんとDさんは、自分たちの遺留分が侵害されているとして、遺留分を請求したい意向のようでした。
●弁護士の関わり
Aさんはこのままでは遺言が執行できないので困ってしまい、裁判所に遺言執行者選任申立を行いました。
弁護士は裁判所から遺言執行者に選任され、金融機関の口座解約や不動産の相続による所有権移転登記手続きを開始しました。
CさんとDさんに対しては、遺言書の内容の執行を認めるのであれば遺言書で指定された割合の金額を振り込むと伝え、遺言執行への協力を依頼しました。
Dさんからはなかなか協力の意思が得られませんでしたが、弁護士が丁寧に説明した結果、遺言執行が完了する直前に同意するとの意向が示され、遺言執行は完了しました。
弁護士は遺言執行の結果を裁判所に報告し、裁判所はこれを承認しました。
●弁護士の所感
例え法的に有効な遺言書が残されていても、その内容が一部の相続人の遺留分を侵害しているような場合、その内容に不満を持つ相続人が手続きに協力しないため、遺言執行が円滑に進まないことはあります。
このような場合、遺言執行を進めるためには、家庭裁判所に遺言執行人の選任申し立てるのも一つの方法です。弁護士が遺言執行人に選任された場合、法律の専門家として遺言書の内容に従い、公正に遺言執行の任にあたります。ある程度の相続人間の意見の調整も遺言執行人が行います。
遺言執行人は、遺言書に従い遺産相続を行いますので、相続人間で折り合いがついていない場合でも、遺言書通りに遺産相続手続きを行います。
執行された内容に不服がある相続人は、遺言執行のあとで他の相続人に侵害された分の返還を請求することになります。CさんとDさんには遺留分がありました。
このような場合、遺言執行人として関わった弁護士は、遺言執行のあとの係争には関与することはできません。
遺言執行は完了しても、後で遺留分侵害返還訴訟が提起されると解決に長い時間がかかることがあります。
今回の案件では、弁護士がCさんとDさんに遺言通りに執行した場合のそれぞれの相続分をきちんと知らせて、両者にじっくり考える資料を提示したので、二人の了解を得ることができました。
Aさんは行き詰っていた遺言執行が、手間のかかる遺産の調査やCさんとDさんとの交渉もすべて弁護士に任せた上に、早期に完了したので非常に喜んでおられました。