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コラム

相続した不動産をどうするか——売却・共有・国庫帰属の選択肢

実家を相続したものの、誰も住む予定がない。遠方にあって管理ができない。売ろうとしても買い手がつかない。こうしたご相談が増えています。
不動産は、預貯金と違って分けにくく、持ち続けるだけで費用と責任が生じます。取得した後にどうするかを決めないまま時間が経過すると、選択肢が狭まっていきます。
この記事では、相続した不動産について取りうる選択肢、共有のまま保有することの問題、2023年に始まった国庫帰属の制度について整理します。
 

① まず現状を把握する

方針を決める前に、その不動産がどのような状態にあるかを確認しておくことになります。
 

登記の内容

法務局で登記事項証明書を取得すると、名義人、面積、抵当権の有無などが確認できます。所在地がわかれば誰でも取得でき、オンラインでの請求も可能です。
長年手続きがされていない場合、名義が祖父母の代のままになっていることがあります。この場合、現在の相続人が誰かを戸籍で辿る作業から始めることになります。
 

評価額

固定資産税の納税通知書に記載された評価額のほか、相続税の算定に用いる路線価、実際の取引価格である時価があります。
売却を検討されるのであれば、複数の不動産会社に査定を依頼して時価の見当をつけることになります。査定自体は無料で行われるのが一般的です。
 

維持にかかる費用

 

費用の種類 内容
固定資産税・都市計画税 毎年課税される。住宅用地の特例が外れると負担が増す
管理の費用 草刈り、通水、換気など。業者に依頼すると月数千円から
修繕費 屋根や外壁の劣化が進むと、まとまった支出が生じる
火災保険料 屋根や外壁の劣化が進むと、まとまった支出が生じる

 
使う予定のない不動産であっても、保有している限りこれらの負担が続きます。判断を先送りすることにも費用がかかるという点は、意識しておきたいところです。
 

② 取りうる選択肢

相続した不動産について、主に次のような方法が考えられます。
 

選択肢 向いている場面
売却する 誰も使う予定がなく、買い手が見込める
賃貸に出す 立地がよく、一定の収益が見込める
相続人の一人が取得する 居住を希望する人がいる
共有のまま保有する 方針が決まらない場合の暫定的な状態
相続放棄をする 負債が多く、他に取得したい財産もない
国庫に帰属させる 土地のみで、買い手も使い道も見込めない

 

換価分割という方法

相続人が複数いる場合、不動産を売却して代金を分ける方法があります。換価分割と呼ばれます。
現物のまま分けにくい不動産を、金銭に換えてから分配するため、公平を図りやすいという利点があります。一方、売却までに時間がかかること、価格が想定を下回る可能性があることは踏まえておく必要があります。
 

代償分割という方法

一人が不動産を取得し、他の相続人に対して相当額の金銭を支払う方法です。実家に住み続けたい相続人がいる場合などに用いられます。
取得する側に支払いの資力が必要となります。不動産の評価額をいくらと見るかについて、当事者間で意見が分かれることもあります。
 

③ 共有のまま持ち続けることの問題

方針が決まらないまま、法定相続分に応じた共有として登記されることがあります。この状態には、いくつかの制約が伴います。
 

処分には全員の同意が必要

共有物の売却や大規模な改修には、共有者全員の同意が必要です。一人でも反対すれば進められません。
賃貸に出すことについても、期間によっては持分の過半数の同意が求められます。
 

時間とともに共有者が増える

共有者の誰かが亡くなると、その持分がさらに相続されます。世代を重ねるほど共有者が増え、面識のない親族が加わることになります。
数十人の共有になっている土地も珍しくありません。この状態になると、全員の同意を得ることは事実上困難となります。
 
共有は、方針が決まるまでの暫定的な状態として選ばれることが多いものです。
もっとも、そのまま時間が経過すると、解消がより難しくなっていきます。
共有とする場合でも、いつまでにどうするかを相続人の間で確認しておくことが望まれます。
 

共有を解消する方法

共有状態を解消したい場合、まず共有者間で協議を行います。持分を買い取る、売却して代金を分けるといった方法が検討されます。
協議がまとまらない場合には、裁判所に共有物分割を求めることになります。2023年の改正により、所在が不明な共有者がいる場合に、その持分を取得したり譲渡したりする手続きが設けられました。
 

④ 空き家として管理する場合の責任

使う予定がなくても、所有している以上は管理の責任が生じます。
 

建物の管理不全による責任

屋根瓦や外壁が落下して通行人に怪我をさせた場合、所有者が責任を負うことがあります。土地の工作物の設置や保存に瑕疵があった場合の責任として、民法に定めがあります。
遠方に住んでいて状況を把握していなかったとしても、責任を免れるとは限りません。
 

特定空家等に指定された場合

空家等対策特別措置法に基づき、倒壊のおそれがある、衛生上有害である、著しく景観を損なっているといった状態の空き家は、特定空家等に指定されることがあります。
指定されると、市区町村から助言・指導・勧告・命令という段階を経た対応がなされます。勧告を受けると、住宅用地に対する固定資産税の特例が適用されなくなり、税負担が増します。
命令に従わない場合には、行政代執行により建物が除却され、その費用が所有者に請求されることもあります。
 

管理不全空家等という区分

2023年の法改正により、特定空家等になるおそれのある状態の空き家について、管理不全空家等という区分が設けられました。こちらも勧告を受けると固定資産税の特例から外れます。
放置していると段階的に負担が増していく仕組みとなっています。
 

⑤ 相続土地国庫帰属制度

2023年4月27日に始まった制度で、相続によって取得した土地を国に引き取ってもらうことができます。
 

対象となるもの

相続または遺贈によって土地の所有権を取得した方が申請できます。売買で取得した土地は対象外です。
制度開始前に相続した土地についても申請できます。何十年も前に相続した土地であっても対象となります。
 

引き取ってもらえない土地

どのような土地でも引き取られるわけではなく、要件が定められています。
 

  • 建物が建っている土地は対象外。更地にする必要がある
  • 抵当権などの担保権が設定されている土地
  • 通路など、他人による使用が予定されている土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない土地、所有権について争いがある土地
  • 崖があり、管理に過分の費用を要する土地

 

費用

申請時に審査手数料として、土地一筆あたり14,000円を納付します。
承認された場合には、10年分の土地管理費相当額を負担金として納付することになります。宅地や田畑については原則20万円ですが、市街化区域内の宅地など、面積に応じて算定される場合もあります。
申請から承認までは、半年から1年程度を要するとされています。
 

⑥ 売却する場合の税金

相続した不動産を売却した場合、譲渡所得として課税されることがあります。
 

取得費の引き継ぎ

譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて算定します。相続した不動産については、被相続人が取得したときの価額を引き継ぐことになります。
購入時の契約書が残っていない場合、売却代金の5パーセントを取得費とみなす方法がとられます。この場合、実際よりも税負担が大きくなることがあります。古い資料であっても、探してみる価値があります。
 

相続財産を譲渡した場合の特例

相続税を納付した方が、申告期限の翌日から3年以内に売却した場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。
相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。したがって、相続開始からおよそ3年10か月以内の売却が対象となります。
 

空き家に係る特例

被相続人が一人で住んでいた家屋とその敷地を売却する場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続の時から譲渡の時まで事業や居住に使われていないことなどの要件があります。適用の可否については、税理士にご確認いただくことになります。
 

⑦ 相続登記は義務となっている

2024年4月1日から、相続によって不動産を取得した場合の登記申請が義務となりました。
取得を知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠った場合には10万円以下の過料の対象となります。
 

過去の相続も対象

制度開始前に発生した相続についても適用されます。この場合、2024年4月1日と取得を知った日のいずれか遅い日から3年以内が期限となります。
 

遺産分割がまとまらない場合

分割の協議が整わない場合には、相続人申告登記という手続きがあります。自分が相続人である旨を法務局に申し出ることで、申請義務を果たしたものとして扱われます。
これは暫定的な措置であり、その後に遺産分割が成立した場合には、成立の日から3年以内に改めて登記を申請することになります。
 

⑧ よくあるご質問

Q. 売れない土地だけを相続放棄することはできますか。

A. 相続放棄は、プラスの財産とマイナスの財産をすべて含めて放棄する手続きです。特定の財産だけを選んで放棄することはできません。預貯金など他に取得したい財産がある場合には、別の方法を検討することになります。
 

Q. 建物が古く、解体費用もかけられません。

A. 自治体によっては、空き家の解体費用に対する補助金を設けているところがあります。要件や金額は地域によって異なりますので、所在地の市区町村にご確認ください。また、建物付きのまま売却に出すという方法もあります。
 

Q. 共有者の一人が行方不明です。

A. 所在が不明な共有者がいる場合、裁判所の手続きを経てその持分を取得したり、第三者に譲渡したりする制度が設けられています。また、不在者財産管理人を選任して協議に加わってもらう方法もあります。状況に応じて取りうる手続きが変わりますので、個別にご相談ください。
 

Q. 国庫帰属の申請をすれば、確実に引き取ってもらえますか。

A. 要件を満たす必要があり、審査を経て承認されるかどうかが決まります。建物が残っている、境界が不明確といった事情がある場合には、事前の整備が求められます。申請前に、要件を満たすかどうかを確認しておくことになります。
 

まとめ

相続した不動産の取り扱いについて、本記事で整理した内容を振り返ります。
 

  • 登記の内容、評価額、維持費用を把握することから始める
  • 売却・賃貸・単独取得・共有・放棄・国庫帰属といった選択肢がある
  • 共有のまま時間が経過すると共有者が増え、解消が難しくなる
  • 空き家の管理が不十分だと、固定資産税の特例から外れることがある
  • 相続土地国庫帰属制度は土地が対象で、建物がある場合は更地にする必要がある
  • 相続登記は2024年4月から義務となり、3年以内の申請が求められる
  • 分割がまとまらない場合は、相続人申告登記により義務を果たすことができる

 
「使う予定のない不動産を相続した」「共有のままになっていて進め方がわからない」といったご相談を承っております。不動産の状況を伺いながら、取りうる方法をご一緒に検討いたします。

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