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コラム

投資信託を相続したらどうすべき? 名義変更と手続きの流れを解説

投資信託は銀行預金や株式と同様に相続できます。ただ、相続税がかかる場合は評価額の計算がやや複雑です。また、日々価格が変動するため、遺産分割協議でもトラブルの原因になりやすく注意が必要です。投資信託の名義変更と手続きの流れを解説します。
 

投資信託の相続・名義変更 遺産分割のルールと評価方法を解説

「親が投資信託に投資していたけれど、銀行預金と同じように手続きできるの?」 そんな疑問をお持ちの方は少なくありません。投資信託は、「価格が日々変動する」「法律上、当然には分割されない」といった特徴があります。 本記事では、投資信託の名義変更を行う方法や流れ、遺産分割協議のポイント、相続税の評価方法などを解説します。
 

投資信託とは

投資信託とは、投資家から集めた資金を元に運用会社が株式市場などに投資し、その運用利益を投資家に分配するという投資方法です。
株式投資などを行うには専門的な知識が必要ですが、投資信託なら、資金を預けるだけで、プロが運用し、分散投資を行うため、個人が1つの銘柄に集中投資するよりはリスクを分散しやすいと言われています。
そのため、資産が余っている方だと、投資信託に資金を預けていることも少なくありません。
 

投資信託は相続の対象になるのか?

投資信託は、銀行預金や株式などと同様に相続の対象になります。
銀行預金とほぼ同様の方法で相続することが可能です。
 

投資信託は遺産分割協議が必要なのか?

投資信託を相続する際は、遺産分割協議が必要です。
つまり、自動的に法定相続分で分割されるわけではありません。
 
投資信託による利益を受けられる権利を受益権といいますが、これには、
 

  • 償還金請求権及び収益分配請求権などの金銭支払請求権
  • 信託財産に関する帳簿書類の閲覧又は謄写の請求権等の委託者に対する監督的機能を有する権利
    が含まれています。
    可分給付を目的とする権利でないものが含まれていることから、「共同相続された投資信託受益権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない」というのが判例の見解です(最判平成26年2月25日 民集 第68巻2号173頁)。

 

投資信託の相続方法は?

投資信託を相続する方法は、2つあります。
 

  • 遺言書に指定された人が相続したり遺贈を受ける
  • 遺産分割協議で決めた人が相続する

 
一つ一つ確認しましょう。
 

遺言書に指定された人が相続したり遺贈を受ける

投資信託は銀行預金と同じ感覚で、相続人のうちの誰かに相続させたいという形で、遺言書で相続する人を指定することができます。
もちろん、相続人以外の人に受け継がせることも可能で、この場合は、「遺贈」になります。
 
具体的には、被相続人が生前に遺言書を作成して、誰に相続させたり、遺贈するのか記載しておきます。
遺言書を相続人等に確実に渡るようにしたいなら、法務局の自筆証書遺言保管制度や公正証書遺言を作成するのが無難です。
その際は、法定相続人の最低限の取り分である遺留分を侵害しないように注意しましょう。
 
被相続人が亡くなったら、相続人は遺言書を探し出します。そして、遺言書を基に証券会社などが示す手順に従い、投資信託の相続手続きを進めます。
 

遺産分割協議で決めた人が相続する

被相続人が生前に遺言書を作成していなかった場合、または、遺言書があっても、投資信託の相続について記述がなかった場合は、相続人同士で遺産分割協議を行い、投資信託を誰が相続するのかを決める必要があります。
 
遺産分割協議では、必ず法定相続分で分けなければならないわけではありません。
ただ、相続人全員が参加して、合意を成立させる必要があります。
 
遺産分割協議がまとまった場合は、遺産分割協議書が作成されます。これに基づいて、証券会社の手順に従い、投資信託の相続手続きを進めます。
 

投資信託を名義変更するための遺産分割方法

投資信託の名義変更に先立って、具体的な分割方法を決めなければなりません。
投資信託については、相続人の一人がすべて相続する方法と、遺産分割協議で決めた割合で分割する方法の2つが主な選択肢になります。
具体的な分割方法を確認しましょう。
 

投資信託の現物分割

現物分割とは、相続人間で被相続人の遺産を一つずつ分け合う方法です。
例えば、銀行預金、投資信託、株式といった遺産があり、法定相続人が子ども3人(A、B、C)だったとします。
この場合に、Aには銀行預金、Bには投資信託、Cには株式という具合に分け合う方法のことを意味します。
銀行預金、投資信託、株式の価値がほぼ等しい場合は、比較的公平な分け方が可能です。
しかし、価値の差が激しい場合は、公平な分割にならないので、少ない人には他の遺産を相続させるといった調整が必要になります。
 

投資信託の代償分割

代償分割とは、被相続人の遺産を一部の相続人が相続する代わりに、遺産を相続できなかったり取り分の少ない相続人に代償金を支払うという分割方法です。
 
例えば、相続人の一人が多額の投資信託を相続し、他の相続人の取り分がないか、少ないケースでは、投資信託を相続する人から、他の相続人に代償金が支払われます。
このような形で相続すれば、投資信託を換金する必要はなく、その後も運用することが可能です。
もちろん、投資信託を相続した人が、まとまった額の代償金を支払えることが前提になります。
 

投資信託の換価分割

換価分割とは、分割しにくい財産を売却して、その売却益を分割する方法です。
誰も住まなくなった実家を処分する場合などに検討されることが多いです。
投資信託のケースでは、被相続人が亡くなると、口座が凍結されてしまうため、被相続人が所有していた投資信託を売却して換金することはできません。
もしも、換価分割したい場合は、相続人の代表者の名義に変更したうえで、売却し、換金した金額を相続人同士で分け合うという流れになります。
 

投資信託の共有分割

共有分割とは、法定相続人が法定相続分で共有するという方法です。遺産分割せずに共有しましょうという方法で、遺産分割協議が進まない場合に、やむを得ず選択することがあります。
投資信託については、共有名義とすることは難しいため、共有分割を選択することはできません。
共有分割と同様にしたい場合は、法定相続人がそれぞれ、投資信託口座を開設し、それぞれの法定相続分に応じた口数で分け合うのが現実的な方法になります。
 

投資信託を名義変更するための話し合い

投資信託の名義変更を行うためには、遺言書に明記されている場合を除き、投資信託を誰が相続するのかを話し合わなければなりません。
この話し合いを遺産分割協議と言います。では、遺産分割協議はどのように行ったらよいのでしょうか。
 

相続人同士で集まって協議を行う

遺産分割協議の基本は、相続人同士で集まって、話し合いを行うことです。
そのためには、まず、法定相続人が誰なのかを明確にしなければなりません。
具体的には、被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本等を取り寄せたうえで、被相続人の子どもを中心に、相続人が誰になるのかを確認します。
再婚している場合は、前の配偶者との子どもがいる事もありますが、その人も相続人になります。
被相続人の子どもが既に他界している場合は、その子ども(被相続人の孫)が相続人になります。
葬儀の直後は、慌ただしいことが多いため、落ち着いてから集まって話し合うことが多いでしょう。
投資信託についてはいつまで相続手続きをしなければならないといった決まりはありません。
ただ、遺産が多額の場合は、相続税の申告と納税が必要なので、原則として、相続開始から10ヶ月以内をめどに、遺産分割協議を終えている必要があります。
 

遺産分割協議が進まない場合は調停・審判手続き

相続人同士が揉めてしまい、話し合いがまとまらない場合などは、家庭裁判所の遺産分割調停・審判の利用を検討します。
遺産分割調停では、家庭裁判所の裁判官や調停委員を交えて話し合いを行うことができます。調停委員は、双方の話し合いがまとまるようにアドバイスしたり、解決案を提示したりします。
 
相続人全員が納得できる調停案がまとまれば、調停調書が作成されるので、これに基づき、投資信託の名義を変更する手続きを進めることができます。
 
遺産分割調停が不成立になった場合は、自動的に審判手続が開始されます。
審判手続では、裁判官がそれまでの調停の経緯を踏まえて、審判を下します。
一般的には、法定相続分に基づいて、遺産の分け方が決まることが多いです。
 

投資信託を名義変更するための相続手続き

投資信託の名義変更を行うためには、まず、投資信託の口座を管理している金融機関に連絡して手続きを進めてもらう必要があります。
その流れを解説します。
 

金融機関に相続手続きをしたい旨を伝える

投資信託の口座を管理している金融機関に被相続人が亡くなった旨と、相続手続きを進めたい旨を伝えます。
一般的には、連絡を受けた金融機関は、その口座を凍結します。
その後、相続手続きに進みますが、遺産分割協議をまだ行っていない場合は、この段階において、投資信託口座の残高証明書を取得しておきましょう。
 

金融機関に必要書類を提出する

遺言書や遺産分割協議が終わって、投資信託を誰が相続するのかが決まったら、金融機関の案内に従い、相続手続きを行います。
その際は次のような書類が必要になることが多いです。
 
遺言書の場合
 

  • 遺言書
  • 検認調書(公正証書遺言もしくは遺言書保管制度を利用していた自筆証書遺言の場合は不要)
  • 法定相続情報一覧図の写し、もしくは、被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
  • 投資信託を相続する人の印鑑登録証明書

 
遺産分割協議を行った場合
 

  • 遺産分割協議書
  • 法定相続情報一覧図の写しまたは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本及び被相続人と相続人の続柄が確認できる戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑登録証明書

 

投資信託の名義変更の完了

一般的には、投資信託の相続手続きでは、被相続人名義の投資信託の口座を相続人の名義に変更するという形で手続きすることはありません。
投資信託を相続する人が新たに投資信託の口座を開設し、被相続人名義の投資信託の口座から移されるという形になります。
 

相続税がかかる場合の投資信託の評価方法

投資信託を含む遺産の額が、相続税の基礎控除額「3,000万円+(法定相続人の数×600万円)」を超えている場合は、投資信託について正確な相続税評価額の計算が必要です。
投資信託の相続税評価額を計算する方法は、投資信託の種類により異なるため注意が必要です。
 

一般的な投資信託

一般的な投資信託については、相続が発生した日の基準価額を基に計算します。
具体的には、「被相続人保有の投資信託の口数×相続発生日の基準価額」で計算することが可能です。
ただ、再投資されていない未収分配金の加算、信託財産留保額や解約手数料の控除、更に、取得費や譲渡費用を差し引いた含み益が生じる場合は、その含み益から譲渡所得税相当額を控除するといった計算も必要です。
 

上場投資信託

上場投資信託は、株式と同様に市場で取引されているため、市場価格で計算します。
具体的には、次の4つのうち、最も低い価格を選びます。
 

  • 相続発生日の終値
  • 相続が発生した月の取引日ごとの終値の平均値
  • 前月の取引日ごとの終値の平均値
  • 前々月の取引日ごとの終値の平均値

 
そして、「上記の値 × 保有口数」で計算します。
 

日々決算型投資信託

日々決算型投資信託とは、MRFやMMF等のことで、毎日決算が行われるというものです。
相続開始時に保有している口数がそのまま、相続税評価額になります。
 

投資信託を相続する際の注意点

投資信託を相続する際には税金やコストがかかる可能性がある点に注意しましょう。また、投資信託に関する相続特有の問題点もあります。
どのような点に注意すればよいのか解説します。
 

投資信託を解約する場合

投資信託を相続した後で解約し、現金化するなどした場合です。
投資信託の契約内容によっては、解約違約金や信託財産留保額が発生することがあります。
 
また、現金化の際に売却益(譲渡益)が生じる場合は、譲渡所得税(20.315%=所得税および復興特別所得税15.315%+住民税5%)がかかります。
被相続人が投資信託を購入した時よりも基準価額が上昇していれば課税対象となります。
 

代償分割の場合は贈与税がかかる場合がある

代償分割を行った場合、つまり、投資信託を相続した相続人から、相続できなかったり、取り分が少なかった人に代償金を支払う場合です。
代償金の支払いは、一見すると、金銭の贈与に見えてしまうため、贈与税が課税されてしまうことがあります。
これを避けるには、遺産分割協議書で、代償分割を行う旨と代償金の金額を明記しておくことがポイントです。
 

投資信託取得のタイミングによっては不公平になることもある

投資信託の価額は、相続開始時の評価額を基準としますが、相続開始と同時に相続手続きを済ませてしまうことは難しいでしょう。
そのため実際に投資信託を取得した時点で、投資信託の価額が変動している可能性があります。
価値が上がっていれば、得しますが、下がっていれば損したように感じてじまうでしょう。
そのために、相続人間で話し合いがまとまらなくなることがあります。
 

まとめ

投資信託の相続は、株式や銀行預金と同様に手続きできますし、それほど難しくないと感じるかもしれません。
しかし、価格変動が生じやすいですし、相続税が課税される場合は、相続税評価額を計算することがややこしいこともあります。
投資信託の相続のことや名義変更に関して不安に感じている方は、弁護士等の専門家にご相談ください。

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