コラム
平成30年の相続法の改正
平成30年の相続法の改正
民法の相続法の改正は、昭和55年に、配偶者の法定相続分の引き上げ、寄与分制度の新設等が行われましたが、その後は大きな改正はされず、30年以上経過しました。
その間、日本では高齢化が進む一方、社会一般の晩婚化や非婚化が増え、また離婚・再婚も増加するなど、従来一般的に捉えられていた家族の形が変化し、多様化するようになってきました。
高齢化が進むと、相続の発生時期も遅くなり、相続開始時の配偶者の年齢が70代、80代に達していることも多くなり、高齢の配偶者の生活を保障する必要性が高くなってきました。また、子の年齢も40代、50代に達していることから、子は既に親から独立して家庭を持って安定して生活をしていることも多く、そのような面からも子よりも高齢配偶者をより保護する必要性がより高まっているといえます。
このような点を踏まえて、従来の相続法を社会の実態に則したものにするべきだという議論が強くなりました。
そのため、法制審議会での議論を経て、平成30年に民法が大幅に改正されることになりました。
改正のポイントは、以下のとおりです。
1 高齢配偶者の保護
高齢化に伴い、相続発生時に残される配偶者も高齢であることが多くなってきました。そのため、高齢化した生存配偶者を保護する必要が高まっています。
そこで今回の改正では、配偶者の居住の権利が「配偶者居住権」の制度として新設されました。これによって、残された配偶者は、住宅に住み続けることができるようになりました。
また、20年以上連れ添った配偶者のために自宅を遺贈または贈与した場合、特別受益の持ち戻し免除の意思表示を推定した規定も新設されました。
2 遺言の方式緩和
今回の改正では、遺言の活用を進めるため、自筆証書遺言の作成の方式が緩和されました。また自筆証書遺言を法務局で保管する制度も新設されました。
3 遺産分割についての紛争の対応
遺産分割前の預貯金については、それまで相続人全員の同意がないと払い戻しを受けることができませんでしたが、葬儀費用や相続人の当面を支出する必要性もあるため、そのような事情がある場合には、相続人全員の同意がなくても、一定の範囲で払い戻しを受けられることになりました。
4 特別寄与料制度の新設
昭和55年当時よりも、現在は家族の形も多様化し、子や親族の親との関わり方も人によって様々です。そのため、従来相続人に限られていた寄与分の主張を、相続人以外の一定範囲の親族も特別寄与料として相続人に請求できるようになりました。