コラム
特別受益を請求する流れ(令和3年民法改正含む)
特別受益を請求する流れ
遺産分割で、ある相続人だけ生前贈与を受けていて、「特別受益」がある場合は、相続においてはその「特別受益」を相続財産に持ち戻してから、遺産分割をする必要があります。
「特別受益」については、他方の相続人がその存在を主張して、みなし相続財産を算定していく必要がありますが、そもそも「特別受益」があるかどうかで相続人間でもめることがあります。
不動産のように登記が必要なものについては明らかに生前贈与があれば、登記を調べればわかり、預金の振り込みであれば、振込履歴を調べればわかります。
しかし、現金で渡す場合は振込の記録が残らないですし、振込であっても時期が非常に古い場合は銀行取引の履歴がとれないため、「特別受益」の存在を立証することは難しくなります。
結局、「特別受益」を主張されている相続人がこの事実を否定した場合は、それを裏付ける証拠がないと、それ以上は「特別受益」を主張することは困難になるのです。
このように、ある程度の立証が可能か、法的な判断をする必要があります。「特別受益」があれば、それを相続財産に持ち戻して、全体をみなし相続財産として遺産分割を求めていくことになります。
なお、令和3年の民法改正により、特別受益の主張をするのは、相続開始時から10年経過後はできなくなりました(民法904条の3)。
紛争の早期解決を優先する法律改正がされたのです。
したがって、今後、他の相続人の特別受益を主張するためには、相続開始から10年経過する前に、遺産分割協議の中で、特別受益の主張する必要があります。なお、相続開始から10年以内に家庭裁判所に遺産分割の請求を申立てられていれば、その中で特別受益の主張をすることは認められます。