解決事例
遺産分割(調停)
姉が、生前認知症状態であった母親の遺産を独り占めしようとしたので、弁護士が入り調停で解決した事例
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背景
Aさんの母親Bさんの死亡後に、姉のCさんに遺産相続の話をしましたが、Cさんは「母親の財産はない。」と答えて遺産分割協議に応じませんでした。
その後Aさんは、何度も遺産分割協議に応じるようにCさんに口頭や文書で求めましたが、Bさんの死亡後1年以上が経過しても、Cさんは一切Aさんとの協議に応じようとはしませんでした。
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弁護士の関わり合い
Cさんの態度に困り果てたAさんは、今後の対応について当事務所を訪れて弁護士に相談されました。弁護士と相談の結果、Aさんは調停を申し立ててこの問題を解決することを決意し、実務を弁護士に委任されました。
弁護士は、Bさんの遺産の調査を進めました。調査の結果、CさんはBさんの生前からBさんの通帳から多額の出金を繰り返し、Bさんの死亡時には殆ど預金は無くなっていたことが判明しました。又、Bさんが死亡する3年前に公正証書が作成され、Bさんの死亡でBさんの土地はCさんの所有とななり、1年後に売却されていました。
弁護士はAさんの代理人として遺産分割の調停を申し立てました。弁護士の主張は大きく次のようになりました。
・Cさんが引き出していた金額は実際の生活費よりも過大で、差額はBさんの相続財産でありAさんは相続の権利があること。
・Bさんは死亡する3年前には認知症の状態にあり、その頃に作成された公正証書はBさんに判断能力なかったので無効である。従って、Bさん所有であった土地・建物は相続財産であり、Aさんには相続の権利があること。
これらの主張に対し、Cさん側は多額の生活費が必要であったとか、公正証書作成時にBさんは認知症状態ではなかったなどと主張しました。
弁護士は、預金通帳に残されていた出金の理由や金額を細かく分析して、Cさんの主張の矛盾点を追求しました。Bさんの認知症については、当時の介護認定調査の書類に、主治医の意見として「アルツハイマー症のうたがい」と記入されていることから、Bさんには正常な判断能力がなかったと主張しました。
調停は1年にも及び、双方の意見は対立していましたが、調停員から早期解決のための和解案が出されました。調停案はAさんの主張をかなり認めていたので、Aさんは弁護士と協議してこれを受け入れることにしました。
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弁護士の所感
高齢の親の遺産を巡って争いが起こる場合、亡くなった人の生前の判断能力が問題になることがあります。判断能力の低下した親と同居したり近所にすんでいたりする子供が、相続で自分に有利になるように遺言書を作らせることや、生前に預金を取り込んでしまうことは珍しくありません。
親の判断能力に疑いがあったとしても、いったん作成された公正証書遺言を法的手続きで無効にするのは非常に困難です。
兄弟姉妹であっても、遺産という金銭が絡むと冷静な話し合いが出来なくなり、お互いに相手に対する不信感や憎悪が増すばかりで泥沼状態になることは珍しくありません。
このような場合に弁護士に委任すると、弁護士は客観的な証拠を分析して、委任者の権利として当然得られる金額を割り出して交渉を行います。
交渉で纏まらない場合は調停を申し立てて解決を目指します。調停が不調に終了した場合は裁判を提起して法廷での判断を求めます。
弁護士は、常に委任者にとって合理的な結論が得られるように、冷静に着実に協議・調停・裁判に臨みます。
当事者が、感情が先に立ってしまって冷静に対処できない場合は、弁護士に相談や交渉を委任されることをお勧めします。